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福島への偏見で闘う市長がいる

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津波原発事故という複合災害に襲われた福島。

当初から課題とされていた「心のケア」。震災から7年が経ち、少しずつ心的外傷後ストレス障害PTSD)などの問題が改善に向かっている一方で、いまもそこで暮らす人たちを苦しめているものがある。

偏見や、差別すらも生み出す、放射能に関する風評被害だ。そうしたものと戦うために、できることとは何なのだろうか。

ふるさとをなくす、ということ

「家を失くした、ふるさとを失くしたという喪失感は、当事者でしかわからないと思いますよ」

BuzzFeed Newsの取材にそう語り始めたのは、福島県相馬市の立谷秀清市長だ。

未曾有の複合災害におそわれた相馬市では、458人が死亡し、5584棟の住宅が被害を受けた。多くの田畑も被災し、漁業は大打撃を受けた。

また、福島第一原発から北へ約45キロの場所にあるということもあり、事故後はその混乱にも巻き込まれている。

「いままで築き上げてきたもの、さらに、自分のふるさとがみんななくなってしまったのだから。それに加えて、家族や親族、友人や隣人を亡くしたり、津波を目の当たりにしたりしている。被災者にとって、立ち直るのは相当厳しいことでしょう」

「持っていたものを失うことに対する喪失感、挫折感、絶望感は自分にもあるんです。俺の家は、相馬市原釜という海っぱただったんだけど、津波で流された。いまは防災緑地の土手になっちゃった。生まれ育った町、地域子どもの時に見た光景が、想像できないんですよね」

心のケアは、重箱の隅から隅まで

 
立谷市長の生まれ故郷、原釜区にできた防災緑地の土手
 
Kota Hatachi / BuzzFeed

立谷市長の生まれ故郷、原釜区にできた防災緑地の土手

 

そうした中で必要なのは心のケアだーー。医師でもある立谷市長は、はやくから子どもたちの心的外傷後ストレス障害PTSD)の対策に取りくんできた。

「学校が再開したのは4月18日。死者が出た小学校の子どもたちはやっぱり不安定だった。海という言葉を使うと、一斉に泣き出すということもあった」

「家がなくなった子、親を亡くした子もいる。そういう環境のなかで、PTSDは対策しなければいけない、大きな問題だと考えたんです」

臨床心理士を全国から募ってチームをつくり、スクールカウンセラーとして各学校に派遣。その後はチームをNPO法人「相馬フォロアーチーム」として組織を整備した。

「一人一人、重箱の隅から隅まで、米粒一粒一粒拾って、全部をやらなければいけないんですよ。漏れがあってはいけないんだから。被災した子どもたち全員を教育委員会と連携しながら、データベースに入れてやってきた」

「同級生に死者が出た子どもたちもいるでしょう。原体験として非常に強い衝撃になってしまう。大人と違って、障害の修復過程が心のなかでまだできていないのだから、サポートは重要です」

PTSDは「10年ほどは継続してフォローしなければならない重要課題」としている立谷市長。事細かなケアの結果、心の問題は少しずつ改善してきている、と見ている。

放射能」将来に不安を覚える子どもたち

 
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慰霊碑の横に設置されたモニタリングポスト(福島県南相馬市)
 
Kota Hatachi / BuzzFeed

慰霊碑の横に設置されたモニタリングポスト(福島県南相馬市

 

「それでもね、放射能に関する風評被害は、いまだに解決できていないんです。これは子どもたちの心に、いまだに悪い影響を及ぼしている。将来自分が子どもを産めないかもしれないと思っていた子どもたちは少なくない」

そう語る立谷市長が言及したのは、三菱総合研究所が東京都民に向けて2017年8月に実施したインターネットアンケート調査だ。

ここには、福島県の人たちに、放射能によるがんなどの健康障害や、次世代(子どもや孫)の健康への影響が、どのくらい起こると思うか尋ねた項目がある。

どちらの質問についても約半数の回答者(サンプル1000)が、可能性が高いと回答している。前者は53.5%で、後者も49.8%もいたのだ。

立谷市長は、この結果に触れながら、「これを見ていると、腹立たしさすら覚えます。東京がこうならば、日本全国で同じでしょう」とため息をついた。

「一部のメディアでは、奇形などという言葉が使われたこともある。その責任は大きい」

放射能は正しく恐れて、賢く避ける」

 
相馬市内につくられた防潮堤
 
Kota Hatachi / BuzzFeed

相馬市内につくられた防潮堤

 

先出の三菱総研の調査結果では、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の報告(2013年)を引用している。

放射線被ばくによる確定的影響は公衆では観察されておらず、今後も出現しないと予測されている。

また、「事故によって被ばくした人の子孫における遺伝性疾患の識別可能な増加」が生じることは予測されていない。

そのうえで、「現在の世代だけでなく次世代にも健康影響があると過半数の人々が考えている現状は、福島県民に対する誤った先入観や偏見を生み出す可能性も否定できない」と結んでいる。

立谷市長が憂いていることと、同様の指摘だ。

「相馬の方針としては、放射能は正しく恐れて、賢く避けるが方針です。これはもちろん、健康に害を及ばさないようにするため、にです」

「だからこそ、正しい知識をつけられる放射能教育をひたすらに続けていくことが重要なのではないでしょうか。それを実証するために、検査もしっかりと実施してきた」

相馬市では、すべての子どもを対象にした内部・外部被ばく量調査などを続けてきた。空間線量や食品の調査も同様だ。ともに問題がない数値であることが明らかになっている。

さらに市教育委員会では「放射線教育指導資料」を作成し、教育に活用。小中学校で2時間ごとの「放射線教育」を実施している。

福島だけじゃ、解決しない

 
犠牲者へのメッセージなどを記した木の葉を海に流す人たち(相馬市)
 
Kota Hatachi / BuzzFeed

犠牲者へのメッセージなどを記した木の葉を海に流す人たち(相馬市)

 

放射能教育について相馬市内でもアンケートを取ると、ある女子中学生は『将来の結婚に対してあった不安がなくなりました』と書いていました」

できることはやっている。それでも、「福島だけが何かをしても、この問題は解決しない。日本中の偏見があるのですから」と立谷市長は言う。

「これから放射能の事故が全く起こらない、なんてことは言えませんよね。日本にだって、海外にだって原発はあるのですから。だからこそ。これは、相馬だけの、福島だけの問題だけではない。日本全体の問題でもあるんですよ」

震災後には、「福島県の女性だから」として他県の男性との婚約が破断したケースがあったといい、不安は尽きない。先出の調査も、そうしたことを裏付ける結果となっている。

立谷市長は、言葉に力を込めた。

「相馬の子どもたちが将来大人になって、『福島で大丈夫か』と言われたときは、市長の判子を押した証明書を出してもいいと思っている。それこそが、『偏見』と『差別』『いじめ』に対してできることだと考えています」