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なぜ大人はいじめに気づかないフリをするの?

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いじめを苦に自殺をする子どもが減らない。国の調査によると、毎年、数百人もの児童・生徒が自ら命を絶っている。いじめが引き金になっているケースも少なくない。新年度のスタートから2か月がたつ6月は教室の人間関係が固まり、いじめが顕在化しやすいという。事態が深刻化する前に、いち早く手を打つことが求められる。親や教師が子どもたちの異変に気づくにはどうすればいいのか。長年、いじめ問題の取材を続けている日本テレビの岸田雪子さんが取材で得た証言を基に解説する。

ボクは「消えるべき存在」

「親の前では、いい子でいたかったんです。いじめられている自分は、本当に恥ずかしい、だれにも知られたくない自分で、いじめられていることをどうしても認めたくないという気持ちもありました。もちろん報復も怖かった」

 小学5年生のとき、いじめを受けていたというNさんは、当時をこう振り返りました。同級生から総額50万円余りを取られ、日常的に暴力を振るわれ、マンションの屋上から飛び降りようとしたこともあったそうです。

 いじめは、人格を否定します。学校という閉じられた空間で日々、人格を否定され続けた子どもは、自信を失い、自らを「消えるべき存在」だととらえはじめてしまいます。

 「『死ね』とか『うざい』とか、『消えろ』と毎日言われ続けていると、だんだん自分の感覚がなくなっていくんです。自分はダメなんだ、ダメな人間なんだ、自分は殴られる運命なんだ、世の中にいなくていい存在なんだ、という思いで心がいっぱいでした」

 Nさんは、父親の財布からお金を抜き取っていました。持ち物に落書きが増え、学用品に破損が目立つようになりました。「自分はどうせバカだから」「自分なんてなんの取りえもない」などと自らを卑下する発言を繰り返していたそうです。

 両親は、Nさんのこうした異変に気づいていました。そして、ある行動に出ます。

「心の逃げ場所」を伝える

「学校休むか」。父親はNさんに、こう言いました。

 「それを聞いて、あ、死ななくていいんだって思ったんです。それまでは、自分が死ぬか、だれかに殺されるかどちらかだと思っていたんです。学校は行かなければダメだと、ずっと思っていたんです」

 親から、「無理して行かなくていい」「逃げていい」と言われたことで、Nさんは気持ちが楽になりました。大人からすれば、教室は狭い社会で、世界のほんの一部に過ぎないことは当然かもしれません。でも、子どもたちにとっては「世界そのもの」です。だから、教室で繰り返される人格攻撃は、子どもの命を脅かしかねません。

 学校で苦しんでいる子どもに、学校の外にも生きる世界があることを伝えることは、「心の逃げ場所」として、とても大切です。

 

「私たちは失敗した親」

 

 「子どもから『いじめ』っていう言葉が出たら、それはもう赤信号なんです。聞いた大人は、すぐに動かなきゃいけない。『いじめ』っていう言葉は『死』と同じです。『いじめ』は死に直結します。そして、子どもは1回しかSOSを出さない。それを見逃したら、子どもはあきらめてしまう」

 2010年に、当時、中学3年生14歳の次男を自殺で亡くした両親は、後悔の思いを語りました。「私たちは失敗した親です」と、愛息を失った悲しみとともに自責の念にかられているのです。

 子どもたちは、自分がいじめられていることを親に話したがりません。この少年の場合、小学校時代から仲の良かった友達が、同級生4人からいじめを受けていたのをかばったことをきっかけに、今度は自分がいじめの標的になってしまいました。「プロレスごっこ」と称して壁や床に押し付ける行為が繰り返されました。同級生たちが見ている前で、ズボンやパンツを下ろされたこともあったそうです。

 ある日、沈んだ様子の次男に気づいた母親が声をかけます。次男は「いじめ」を明かしたのですが、それは自分のことではありませんでした。

 「僕の友達がいじめに遭っている」

 自分がいじめを受けているということは、決して言いませんでした。自殺する1か月前、次男が加害生徒の教科書をカッターナイフでズタズタに切り裂くことがありました。友達をいじめている子の教科書だと聞いた母は、「やり方を間違えちゃったね」と次男を諭したそうです。そう言った母親の後悔は尽きることがありません。

 「あれは、最後のSOSだったんだと思います。それなのに私は気づけなかった」

 もちろん、親だけが背負うべき問題ではありません。次男へのいじめには複数の子どもたちが気づき、教師に「心配だ」と訴える子もいました。対応しなかった学校の姿勢こそが、まずは問われるべきです。

教師の言動が加害者を生む

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大人にできるのは、気づくことだけではありません。子どもをいじめの加害者にしないことが大切です。ところが、大人の言動が、いじめを生んでしまうことがあります。

 例えば、長縄跳びをやっているときに、もし教師が特定の子どもに、「いつもお前のところでひっかかるな」などと言えば、その子は、「足を引っ張る子」「失敗ばかりする子」などと攻撃の対象にして良いと、教師がお墨付きを与えたことになってしまいます。

 でも、大人が多様性を尊重する視点に立ち、「その子が引っかからないようにするために、どうしたらいいだろう」と子どもたちへ考えるように促せば、飛ぶ順番を変えたり、縄を回すスピードを抑えたりする工夫ができるはずです。

 そうすれば、お互いの違いを認めて支え合う心を育てることができるのではないでしょうか。

 

学校がいじめを認めない理由

 

 なぜ、いじめに苦しむ子どもたちが自殺に追い込まれてしまうのでしょう。

 それは、絶望してしまうからです。学校でいじめが続く限り、子どもたちは生きていることに望みを見いだせなくなってしまいます。

 いじめの現場の一番近くにいる大人は教師です。教師が子どもたちの異変をいち早くキャッチし、保護者と連携して加害行為を止めることが、命を守るために最も大切です。

 いじめは初期の段階では、「いじり」であったり、「からかい」であったりします。それが、徐々にエスカレートし、屈辱的な行為や自尊心を傷つける深刻ないじめへ加速していきます。

 多くのいじめは、初期段階で対応すれば、その芽を摘むことができるはずです。

 教師は、子どもの異変に気づいていることも多いはずです。にもかかわらず、こんなふうに考えてしまいがちです。

 「いじめがあるなんて知られたら、学校の評判が落ちる」

 「どっちが悪いか、子どもたちで考えてほしかった」

 いじめ防止対策推進法という法律で、「いじめられた子が苦痛と感じればいじめ」と定義されました。にもかかわらず、学校側が「その定義では広すぎる」と勝手に解釈を変えて、「いじめではなく、ただのからかい」などと決めつけて問題となったことが最近もありました。

 対応は、スピードが求められます。子どもが死を覚悟してしまう前に、大人が「信頼できる大人」にならなければなりません。

 「なんとなく様子がおかしい」「ちょっと元気がない」「いつもと雰囲気が違う」……。親や教師の勘は、あながち間違っていません。いじめられている子だけでなく、いじめている子も、苦しみを抱えています。目をこらし、心を澄ませ、子どもたちの異変に気づき、「どうしたの」と声をかけ、子どもたちの言葉に耳を傾けてください。そして「あなたを守りたいと思っている」と伝えてください。