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「神戸教員カレーいじめ事件」加害者たちの「その後」

 

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やはり、もう、教壇に二度と立つことはないのだろう。犯した罪は、それだけ大きかったということだ。

昨年、2019年秋に発覚した神戸市教員間いじめ問題で、今年2月、いじめ行為を行っていた加害4教諭のうち、蔀俊、柴田祐介ら両教諭に懲戒免職処分、“女帝”とよばれ、いじめの黒幕とされた40代女性教諭と、その使い走りといわれる30代男性教諭に、それぞれ停職3ヵ月、減給3ヵ月の処分が下された(拙稿『神戸「教員いじめ・暴行事件」、加害者たちは今何をしているのか』)。

いじめ被害にあった教諭も、関係者によると、すでに復職、現在は、事件の舞台となった神戸市立東須磨小学校とは「別の小学校で心機一転、元気に勤務している」ことから、事件そのものは、コロナ禍での喧噪もあってか、日を追うごとに風化の一途へと向かいつつある。

だが、事件の舞台となった神戸市民はもちろん、小学生の子を持つ親にとって、やはりこの事件は、未だ忘れられるものではない。

神戸市立東須磨小学校全景

教育現場復帰は現実的ではないが…

「もしかしたら、また復職して、うちの子の担任になるのではないかと思うと不安でたまりません」

こう語るのは、神戸市内に住む小学校4年生の子を持つ母親だ。神戸市民のみならず、全国にいる小学生の子を持つ親の不安は、まさに、「やがて、いじめ加害教諭が復職、自分の子の担任になるのではないか」という一点に尽きよう。

もっとも、懲戒免職となった蔀、柴田の2元教諭は、すでに教員免許状が失効、神戸市以外の自治体や私立学校での教育現場復帰は、もはや現実的ではない。

制度上、失効した教員免許状の再申請も可能ではあるものの、これだけ世間を騒がせた事件の当事者であることから、他自治体や私立学校が「教諭職」として、あらたに採用する可能性は、ほぼゼロだからだ。

「わざわざ、世間を騒がせて、いじめ事件の当事者として名が知られている“元教諭”を採用する自治体はない。私立学校でも、二の足を踏むだろう。そんなリスクを取らなくても、もっと教員として相応しい人格の、若い優秀な人は、募れば大勢いるのだから」

このように、神戸市の小学校で校長を最後に退職した校長経験者は、懲戒免職となった2教諭をはじめ、事件に関わり、その後、神戸市教育委員会へと異動となった加害2教諭と、事件の大きな遠因を作ったとされる前々校長(元校長)らの教育現場復帰は、「まず、あり得ない」と断言する。これは概ね教育関係者たちの間では衆目の一致した見方だ。

仁王前校長は何をしているのか

さて、前出の校長経験者が言う、「事件に関わった者たち」のうち、事件発覚時の校長、仁王美貴前校長だけが抜けていた。これは、その受けた処分が「監督責任のみを問われたもの」だからだそうだ。

そうすると事件で処分された者のうち、唯一、仁王前校長のみが、教育現場復帰の含みが残されているといったところか。神戸市教育委員会(以下、市教委と略)に問うてみた。

「まず、ありません。すくなくとも、今年度、来年度といった期間では、ありえません」

市教委によると、仁王前校長は、事件後、市教委の上席にある者から、「厳しい内容を持つ研修の意味合いを含めた説諭」(市教委)を受け、校長職を外された。そして市教委へと異動。現在は、ここで事務の仕事に就いている。特に研修を受けることを求められておらず、ごく一般の勤務を行っているという。これは教員や公務員らによると、その世界では、すでに「禊は済んだ」という理解だ。

とはいえ、事件時、55歳だった仁王前校長の年齢、先の市教委の回答を踏まえると、実質的に教育現場への復帰の道は閉ざされたものとみるのが妥当かもしれない。

前々校長と加害2教諭の現在

もっとも、教員世界、あるいは公務員のそれでは、皮一枚、首が繋がった格好の仁王前校長とは異なり、他の事件関係者は、すでに懲戒免職となった蔀、柴田の2教諭を除き、現在も、事件への反省を余儀なくされており、教育現場復帰は、完全に閉ざされたといえよう。

「前々校長の芝本、残る加害2教諭については、市教委にて、カリキュラムを組み、研修を受けさせています」(市教委)

その内容は、芝本前校長がパワハラ、残る加害2教諭がいじめやハラスメントといった内容への理解を深めるものだそうだ。彼らは、現在、市教委で勤務の傍ら、上席者の指導の下、時にワークショップ型の研修を施されているという。その主眼とするところは、関係者によると、あくまでも、「教育関係職としてふさわしい適格性を養うためのもの」だという。実際、彼らは、事件後も、その職種は「教諭」のままだ。

神戸ハーバーランドセンタービル ハーバーセンター4階のオフィスビルにある神戸市教育委員会事務局。いじめ問題の処分教諭らは、現在、ここに籍を置き、勤務しているという。

こうしてみると、やはり、遠い将来、事件のほとぼりが冷めた頃、彼らが教育現場に舞い戻ってくる可能性が残されているようにも思える。そうした記者の声なき声に応えるかのように、市教委は、こう回答した。

「研修の目的は、教育現場復帰を目指すためのものではなく、教育委員会という教育に携わる場で働く者として、必要なそれを身に着けさせるためのものです」

教育行政を掌る教育委員会の仕事は、学校教育、図書館や公民館といった社会教育、その他、ありとあらゆる事務と多岐に渡る。そのどれもが、教育という一点に集中する。そこでの事務の仕事を行うといえども、やはり教育に携わる者としての適格性が必要だ。そのための研修であり、決して、「来る教育現場復帰に備えてのそれではない」(市教委)という。

加害側に取材を申し込んでみると…

さて、この事件処分者への待遇について、前出の神戸市校長経験者らに謎解きをしてもらった。その内容は概ね、次の通りだ。

監督責任のみを問われた仁王前校長は、定年退職後、例えば児童館など、教育関連職での再就職の可能性が残されている。そして神戸市の校長や教員経験者OB・OGの集まりでも、それなりの居場所を用意されるはずだ。ただし叙勲は難しいだろう」

対して、厳しい処遇が続く、芝本元校長、残る加害2教諭については、定年後も茨の道が強いられそうだ。

「勝手にマスコミに登場し、単独で取材を受けた芝本元校長は、もう居場所はない。定年後、すくなくとも神戸市の教育関連職への再就職への斡旋もなければ、採用もないだろう。当然、叙勲もない。残る加害2教諭も同じ」

一般人には窺い知れない処遇の差は、このような形で“処分”として続くのだ。これが生涯続く。これこそが彼らにとっての罰なのかもしれない。

しかし、それでも、ごく一般の市民感覚では、彼らが手厚い公務員身分に守られ、安定した給与を手にしながら、勤務の傍ら、研修という名の“お勉強”を税金でさせて貰っていることに、すくなからず怒りを覚える向きもあるだろう。

そんな彼らは、今、何を思い、事件にどう向き合ってきたのか。市教委に、加害2教諭と、仁王前・芝本元両校長への取材を申し込んでみた。その回答は「仲介は致しかねます――」(市教委)と、にべもないものだった。

ところが、「市教委として仲介はしないが、マスコミ側が本人と接触、本人が単独で取材を受けることについては市教委側は関知しない」(同)と言う。

裏を返せば、これはもう、「いちいち市教委や神戸市を通さず、好きに本人とコンタクトを取れ」という意味と理解できる。事実、市教委幹部のひとりは、私的な意見と前置きしつつ、「組織としてマスコミ取材から彼らを庇いだてやしない」「ノーガード」と語った。

市教委としても、もう、彼らを、持て余しているようだ。

もちろん、これまでにも、懲戒免職となった蔀、柴田の2元教諭を含め、彼ら事件処分者たちに取材受けの交渉を行ってきたが、現時点では、残念ながら捗々しい回答を得ることができなかった。

公務員はこんなに手厚く守られている

神戸市教諭の身分を持つ彼らは、今でこそ教壇にこそ立っていないものの、歴とした教育職の公務員だ。市民への責任がある。今日明日とは言わないが、事件後から今日まで、どう過ごし、何を思うのか、公務員として、みずからの声で市民に説明しても罰はあたらないだろう。

懲戒免職処分により、「神戸市や市教委とは、もう何の関係もない人」(市教委幹部)となった蔀、柴田の両元教諭も、今では“元”がつくとはいえ、やはり公務員、その身分は手厚く守られている。教育関係者や弁護士らによると、彼らが、みずからに下された処分が重たすぎるとして訴訟を起こせば、それが覆る可能性がまだ残されているからだ。

もし、司法が、そのような判断を下せば、細かい手続き上の問題はさておき、「神戸市教諭」として復職、その際には、「懲戒免職後から復職時までの給与、ボーナスなどの支給が行われることになる」(弁護士)という。

あくまでも仮定の話だが、もし懲戒免職となった2教諭が復職した場合、他の加害教諭らと同様、「市教委で研修を受けつつ事務を執る」仕事に就き、そのまま定年退職を迎える公算が強い。

かくも公務員とは、一度、なってしまえば、辞めてもなお、手厚く守られる。はたして、これは、今の時代、市民に受け入れられるのだろうか。

神戸市立東須磨小学校に掲げられている「いじめ撲滅」を謳う幟。児童には呼びかけても教員には呼びかけていない内容。

教育職であるか行政職であるかどうかを問わず、懲戒処分を受けた公務員は、その後、懲戒理由となった事件に、どう向き合い、何を思ったか、一定期間、地方自治体や教育委員会のHPなどで、これを市民に伝えるような仕組みを制度化が急務である。

そうでもしなければ、彼らもまた、ずっと、ネットを通した大勢の声に苦しめられることになる。声をあげるネット民のなかには義憤に駆られて、あらぬ行動に出る者もいるかもしれない。そうした暴挙を事前に防ぐためにも、市教委による彼らへの“処分後の対応”の可視化が必要だ。