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世界中のサバイバーが贈る、温かい言葉たち 「あなたは決してひとりじゃない」「FACES いじめをこえて」

「いじめは100%あなたのせいじゃない。あなたは悪くない」――勇気を出して語ることで、誰かの役にたてるのなら……と世界中から届いた声。NHKと海外の放送機関が連携し、いじめのつらい体験から自分らしく生きていけるようになったきっかけを語る2分の動画サイトの書籍化です。
日本、台湾、クロアチア、ブラジル、クロアチア、ドイツ、ボスニアヘルツェゴビナなど、20名の体験談を収録。小説家の吉本ばななさんやジャングルポケット斉藤慎二さん、「不登校新聞」編集長の石井志昂さんなど、様々な方に推薦をいただいています。
カドブンでは、その中からTAKAHIROさんの体験談を紹介します。

TAKAHIRO

状況は自分が行動することで変えられる

TAKAHIRO日本

 

高校生



状況は自分が行動することで
変えられる



 自分の背後に人がいるのが、とにかく嫌でした。正面から攻撃されたら、「またやってるわ」って思うこともできるけど、後ろで誰かがしやべっていたり、ゴソゴソしていると怖くて仕方なかった。〝また、何かされる〟って。友だちがひとりもいない教室は〝周り全員が敵〟の密室でした。授業中、先生が黒板に字を書いている間、後ろからられたり、殴られたり、物を投げられたり、しまいには、シャーペンなどのとがったもので刺されたり。思い余って後ろを振り向いても、みんな下を向いて知らんぷりしている。誰がやったのかもわからない。
 いじめが始まったのは中学生の頃でした。始まりは突然だった。仲良くしていた友だちに話しかけても無視されるようになったことを機に、突き飛ばされたり、「臭い!」と言われ、ばい菌扱いされたり。クラスにも学年にも味方になってくれる人はいなかった。先生に相談しても、「自分でなんとかしぃ」って言われてしまった。もう、誰にも言わんとこうと思った。人に頼るのはやめた方がいい、自分で解決するしかないって。とにかくずっと逃げ場を探していました。

 それでも学校へ通い続けたのは、いじめに屈してしまう自分が許せなかったから。
「いつか見返してやる」という意地、プライドがあった。朝になると、起きられなくなる起立性調節障害にもかかりました。「もう、起きなくていいかな」と思うこともあったけれど、無理矢理、身体を奮い立たせて学校へ向かっていました。その行動のしんにあったのは、意地もそうだけど、〝学校生活を楽しみたい〟という切実な願いだったと思います。

 進学した定時制高校では、それを実現したかった。けれど入学式のあと、指定された教室の席に座ったとき、手が震えて止まらなくなってしまったんです。僕の席は一番前だった。その場所は、背後から攻撃され続けていた中学のときの記憶を呼び起こしてしまったんです。そして震える手を見ながら気付いたんです。
「あぁ、自分、怖いんやな、我慢してきたんやな」って。このままでいたら、ここでも学校生活は楽しめないと思った。

いじめられた過去は消せないから
楽しいことで上書きしている

 楽しむために何をするべきか、それは自分を変えること。僕は担任の先生に、そのことを素直に話しました。「また、何か言われたらどうしよう」という恐怖でいっぱいだったけれど、先生に相談することこそ、自分の状況を行動で変える一歩だと思った。先生はすぐに対処してくださり、そこからどんどん意見交換をすることができるようになったり、他の先生とも話すことができるようになっていきました。もちろん、周りにいる友だちとも。
 文化祭のときには、自分を変えてみたくて、芝居のキャストとして立候補しました。それを機に友だちの輪はどんどん広がっていった。校内から集まってきた、お互い知らない人たちのなか、「脚本のここ、どう思う?」って聞いたり、「趣味、何?」って問えるようになった。誰かがぽつんと独りでいたら、「どうした? 何してんの?」って話しかけることができるようになった。自分でもびっくりするくらい、以前の僕とは違う行動を取ることができるようになってきた。
 そのなかで自然にやりとりできるようになった「ありがとう」という言葉。日常的に使うそのひと言が、こんなにも自分に響いてくるとは思わなかった。誰かを手助けすると、返ってくる「ありがとう」が、今の僕にはすごくうれしくて、まるで自分が救われているような気がするんです。困っている人がいたら、自分のことをほったらかしにしてもすぐに手を差し伸べられるようになった。そんな変化も自分のなかに発見することができました。
 テスト前には「勉強、わからへん」という友だちに、勉強を教えるようにもなりました。その輪は広がり、大勢で勉強会を開くようにもなった。そこで言われたんです、
「教えるの上手うまいし、教師向いてるんちゃう?」って。「向いてるかな?」「絶対、なった方がいいって!」

 ──今、僕は教師を目指しています。いじめられた過去は、どう頑張っても忘れられない、消せない。でもそれ以上に楽しいことで上書きをすれば、乗り越えられる。今の僕なら、はっきりその言葉を伝えられます。とにかく今、楽しくて仕方ないんです。自分のやりたいことをできるということが。やってみたいことを語ると、「お前ならできそうやな」って言ってくれる仲間のいることが。これが、〝自由〟なんじゃないのかなって思います。

『FACES いじめをこえて』特別試し読み#2 

『FACES いじめをこえて』
著者 NHK「FACES」プロジェクト
定価: 1,320円(本体1,200円+税)
発売日:2021年01月29日