ワケアリ部署に配属された若手。
転職することも当たり前になっている現在、長いサラリーマン人生には多くの岐路が存在しますが、思わぬことで運命が分かれることもあるようです。 部品メーカーに勤めている磯山涼さん(仮名・27歳)は5年前にエンジニアとして採用されましたが、「思わぬところで同期との差がついた」といいます。
運命を分けることになる研修の班分け
「全ては研修のせいです。研修はA班とB班に分かれて受けることになったんですが、A班は情報システム1部が、B班は情報システム2部が担当することになりました。この班分けのせいで、先輩たちにひどい扱いを受けることになるとは思ってもみませんでした」 研修自体には「何の問題もなかった」といいますが……。 「私はA班で研修を受けましたが、どの先輩もわからないところがあれば根気よく教えてくれました。みんな人が良くて、この会社なら長くやっていけそうだと思ったぐらいです」 ですが、研修を終えて正式に配属されると、雰囲気は一変します。
部署ごとに確執が存在。しかも原因は部長…
「配属されたのはシステム2部だったんですが、私が研修班でシステム1部の研修を受けたことがわかると、メンターについた先輩はじめ、周囲から露骨に嫌な顔をされました」 そこで磯山さんは、システム2部が1部を嫌悪していることを知ることになります。 「後でわかりましたが、1部の部長が2部に面倒な仕事をおしつけておいて、そのうえ仕事の成果についてネチネチと口を挟んでくるのが原因でみな心底辟易しているようでした。また部長だけならまだしも、部員たちも追随して2部を見下す感じで接してくるので、仲が悪いというよりもお互いに『敵』とみなしているような雰囲気でしたね」
なぜここまで仲が悪くなったのか
さらに磯山さんは不遇な思いをすることになります。 「メンターの先輩に、1部に染まったやつの面倒を見るのはダルいとか、教える奴がなってないから手癖が悪いなどと毎日のように言われました」 八つ当たりめいた言動をされるだけではなく、磯山さんは立場的にも苦しい状況に追いやられることになります。 「同期の中でも一番知識も技術もあったと思うんですが、部内に3人いた同期のうち僕だけは一向に仕事を任せてもらえませんでした」
逆の状況にいる同期たちは無関心…
その状況に耐え兼ねた磯山さんは、先輩に直訴しました。 「イライラしてなかなか眠れない状況が続いていたので、『できるのでやらせてくれませんか』と直訴したんですが、『まだ変な癖が抜け切れてないからダメだ』と却下されました。しかも僕が直訴したことに怒ったらしく、それ以後は話しかけても無視されるようになりました」 磯山さんとは逆の状況、2部の研修を受けて1部に配属になった同期はどうだったのでしょうか? 「1部の人は特になんとも思っていないようで、2部の研修を受けて1部に配属になった同期は、普通に過ごしていました。同期たちと飲みに行っても誰とも共有できなくて、余計に落ち込みましたよ」
徐々に怒りの矛先が同期に向かう
その孤独感は、同期に対する怒りへと繋がります。 「別に同期が悪い訳ではないので、完全に八つ当たりだったと思いますが、他の同期は先輩にランチに誘われるのに自分だけ誘われなかったり、同期はどんどん仕事を任せられるようになるなか、自分だけ任されない状況が続いて、そう思うようになってしまったんです」 磯山さんにとって1年目はただただ辛い日々でしたが、それも終わりを迎えます。
2年目にやっと状況が改善された
「2年目になってからは、状況が変わりました。一番大きかったのが、新人が入ってきたことで矛先がそちらに向かったことでした。その頃になってようやく2部の人間だと認められたようで、先輩との関係も改善していきました」 ですが、それまでにつけられた差は大きかったと言います。 「1年目の遅れのせいで、入社から5年経った今も同期との差を感じるので、完全に終わったという感じです」 同じような思いはさせたくないと、磯山さんは自分と同じルートで入ってきた後輩たちを率先してフォローするように努めているそうです。